カブのスポーク張替を超丁寧に解説!ブレ取りはバランサーが無くても出来る!?
足元からオシャレに! ノリンです。
ハブとリムをスポークのみんなで頑張って支えていると考えると、なんだか感慨深いです (・´з`・)
バイク整備の中でも、ひときわ難易度が高いと思われる「スポーク張り」ですが、しっかり予習しておけば案外DIYできてしまうかもしれません。
思っていたよりも簡単にできてしまったので、実際に作業して思ったコツなども交えて、ご紹介したいと思います。
この記事を読むと
- スポークを張る流れ
- スポークの張りのコツ
- スポークの張りの注意点
などが分かります。
記事を読むだけで1回作業したくらいの経験値が積めるように、出来る限り細かく書こうと思いますので、頑張って読み切ってください!(笑)
それにしても、スポークをキレイにすると、思っていた以上に足回りのイメージが変わりましたね。
やはり、バイクもオシャレは足元からのようです。
では、まいりましょう!
カブのスポーク構成
構成を知っていないと、後々分かりずらくなってしまうので基本として覚えてきましょう。
まず、カブのスポーク穴の数は「36穴」となります。
36本のスポーク構成は表の通りです。
取付場所 | 外側/内側 | 本数 |
---|---|---|
左側 | 外側(アウター) | 9本 |
内側(インナー) | 9本 | |
右側 | 外側(アウター) | 9本 |
内側(インナー) | 9本 | |
合計 | 36本 |
- アウター:18本
- インナー:18本
となっておりニップルも同じく36個あります。
購入した際は、必ず作業前にスポークとニップルの数を数えておきましょう!
分解した後に足りないと分かったときにはもう・・・( ;∀;)
筆者が乗っているカブ90(HA02)のスポークサイズは下記でした。
カブ90(HA02)の純正スポークサイズ表
取付位置 | 太さ | 長さ(mm) | 品番 |
---|---|---|---|
フロント 内側 | #12(2.6mm) | 159.5 | 44605171305 |
158 | 9717221157F0 | ||
フロント 外側 | 159 | 44606171305 | |
158 | 9754821156F0 | ||
リア 内側 | #10(3.2mm) | 160.5 | 42606171305 |
159 | 9728242158F0 | ||
リア 外側 | 160 | 42605171305 | |
158 | 9754842157F0 |
スポークの張りの大まかな流れ
まずホイールを車体から外し、タイヤも外しておいてくださいね。
通常、スポークを張るときには「バランサー」という専用の台座を使います。
ホイールバランサー
ダイヤルゲージ
より「精度」と「作業効率化」を考えている方はダイヤルゲージがあった方が良いです。
ただ、スポークの張替え自体あんまり頻繁にやる作業でもないし、わざわざバランサーを買うのはちょっと勿体ないかなと思ったので、今回は車体にホイールを付けたままブレ取りを行いました。
もちろん、バランサーを使えば卓上での作業が可能で、かなり楽になると思います。
「お店に頼むのが一番じゃない?」って思ってる方もいるかもですが、それも正解です!
お店にお願いすれば「安心」「安全」「補償」も付いてくるので、DIYに自信がない方は無理せずプロにお任せする選択も良いかと思います。
ちなみにお店に頼む場合、工賃の目安はホイール1本で7,700円~14,300円程度みたいです。
お願いする際は、整備士さんが長年かけて身につけた技術ですので、気持ちよくお支払いしてあげてくださいね! m(__)m
大まかな流れ
下記の順番で進めていきますが、今回はスポークがメインなので解説は 「3~11」を行います。
- ホイールを外す
- タイヤを外す
- 新スポークを内側用と外側用に分ける
- 古いスポークを外す
- ハブ側スポーク穴の拡張(必要があれば)
- スポーク内(インナー)をリムに仮止め【重要】
- スポーク外(アウター)をリムに仮止め
- 縦振れ取りを行う
- 横振れ取りを行う
- スポーク全体を音で確認【重要】
- 規定トルクで締める
- タイヤを組付け
- 車体に取り付けて完成
ニップルレンチは必ず使うので、準備しておいてください。
キタコ
筆者と同じだが、角があるため、ニップルを回す際リムが傷つきそうだった
KTC
厚みが薄めに作れており使いやすい、でもちょっと高め
カブのスポークの張替方法
では、ここからスポークの張替方法を解説していきます。
筆者のカブ90に今回使ったリムとスポークは下記です。
何気にワイドリムにしています!
ちなみに、このサイズ(2.15×17インチ)のリムならポン付けです。
新スポークを内側用と外側用に分ける
内側用と外側用の違いは画像の通りです。
- 内側用:ハブの外側から通して内側へ
- 外側用:ハブの内側から通して外側へ
最終的には全てのスポークが画像のように、外、内からスポークを引っ掛けて、リムの中心に向かって伸びるイメージです。
先述した通り
- アウター:18本
- インナー:18本
で構成されているので、分けておいてください。
このとき、ニップルも36個あるか数えておきましょう!
古いスポークを外す
リムからタイヤを外したら、次はスポークを外していきます。
スポークはニップルの頭を+又は-ドライバーで回していけば外れます。
・・・にしても腐食が酷いっスね・・・
錆などでニップルが回せない場合は、ワイヤーカッターやグラインダー(サンダー)などでカットしてしまいましょう。
どちらも無いのであればグラインダー(サンダー)の方が汎用性が高く、バフ掛けなども出来るのでおすすめです。
一応、ワイヤーカッターなら火花を散らさず、安全に作業は出来ます。
こんな状態に・・・
こうなったらやるしかありません!(笑)
ハブ側スポーク穴の拡張(必要があれば)
純正スポークを使う場合は飛ばしてください。(上記表参照)
筆者のカブ90(HA02)には社外の「#10(3.2mm)」サイズのスポークを使いました。
カブ90はフロント「#12」、リヤ「#10」なのでフロントに「#10」スポークを使う場合は、ハブのスポークが入る穴を拡張しなければなりません。
数字が下がっているのにスポーク径が細くなるって、なんと分かりずらいことか!(・´з`・)
拡張のためのドリルを準備しておきましょう!
6角のビットも使えるのでおすすめ↓
元々のハブのスポーク穴径は
- フロント:#12/4.0mm
- リア:#10/4.5mm
でした。(画像はフロントハブ)
上記から、フロントハブに「#10」を入れるために、リアと同じ「4.5mm」に拡張しました。
ハブの穴を拡張する際は、スポークのサイズに合った穴をあけるようにしてください。
大きすぎるとスポークが引張切れなかったり、ハブが割れる原因になります。
拡張せずに済むならその方が良いです。
スポーク内側(インナー)をリムに仮止め【重要】
ここの工程で画像の状態を目指します。
ここで間違えると最後まで間違えたままになる可能性があるため、よく確認しながら行いましょう!
筆者は違和感を覚えつつも、車体に取り付けるところまで行ったのに、再度全バラする羽目になりました(´;Д;`)
画像のように穴を一つ飛ばしでスポークを入れていきます。
手で持ちながら入れた方がやり易いです。
この時、スタートはどこからでも問題ありません。
そのままハブを反対にし、画像の向きで見た時、下側のスポークより左の穴に入れます。
そこから、1つ飛ばしてスポークを入れていきます。
すべて入れ終わったら、ハブを画像の向き(車体に跨った時の右側が上)で置いてください。
・下側のスポークを時計回りに
・上側のスポークを反時計回りに
払っておくと後の作業が格段にやり易くなります。
スポークの方向は逆でも組めてしまうため、
・ハブの向き
・スポークの張らう方向
をよく確認して進めてください。
最初のこの部分だけ正確に組めてしまえば、後は間違いようがないので、頑張りましょう。
リムに打刻や文字がある方が跨ったときに車体の左側に来るようにしてください。
※カブ90(HA02)の場合フロントもリアもブレーキが付く方が車体の右側なので、リムの打刻はその逆です。
リム穴の向きはスポーク構成と同じなので4方向しかありません。
※指で囲っているのが、4方向(一組)です。
穴の向きとスポークの向きが直線になる穴を探します。
位置が探せたら、3つ穴を飛ばしてハブ上側のスポークを全て入れます。
この時、ニップルはゆるゆる状態で仮止めしてください。
上側が終わったら、下側も同じように仮止めしてください。
18本の仮止め完了です。
この段階でニップルを閉めすぎてしまうと、後で調整が利かなくなります。
電動工具があれば、ある程度までニップルを回すのに便利です。
スポーク外(アウター)をリムに仮止め
スポーク(内)が終わったら、続いてスポーク(外)を取り付けていきます。
ハブの内側から外側に向かってスポークを通していきます。
残っている穴に通していくだけです。
こちらもニップルを軽く閉めておきます。
まだリムは「ガチャガチャ」と左右上下に動く状態です。
次に、全てのニップルをネジ山が隠れるくらいに締めていきます。
締め過ぎた場合は、スポークにあるネジ山の隠れ具合で調整してください。
ここまで来たら、車体に取り付けて回転できる状態にします。
バランサーがある方は、バランサーに載せてください。
縦の振れ取りを行う
いよいよ一番の難関とみんなが思っているであろう「振れ取り」に入っていきます。(笑)
最終的な許容振れ幅は下記です。
- 縦:±1mm以内
- 横:±2mm以内
できれば縦、横共に「±0.5mm」を目指したいところですね。
リムの溶接部分は歪みが酷いのが普通なので、振れ幅には入れないでください。
ちなみに「縦振れ」から行う理由は、後から修正が難しいからです。
振れ取りの前に覚えておきたいこと【重要】
勘違いしてしまいがちですが、「振れ取り」は「リムの歪みを取る」行為ではありません。
「スポークで引っ張ってリムの振れを取る」と聞くと、「リムの歪みをスポークで引っ張り、修正する」ような気がしてしまいますが、それは間違いです。
スポークホイールは中心から「ハブ」「スポーク」「リム」で構成されていますが、当然それぞれの部品自体に歪みが無いことが前提となります。
もし歪みがあるなら、部品の交換が必要です。
似たような意味合いで「リムの精度」というのがありますが、これは歪みというよりも製造工程で多少凸凹したりしている箇所が「多いか、少ないか」と思ってもらえれば良いかと思います。
精度が良く凸凹が少なければ、ダイヤルゲージなどを使用しての振れ取りも、今の振れが「リム自体の歪み」によるものなのか、それとも「振れ」なのかを考えなくてよいので、やり易いですよね!(∩´∀`)∩
また、これから説明する「縦振れ」「横振れ」は次のような意味合いと考えておきましょう。
縦振れ取りとは
横から見たとき、ハブ中心からリムまでの長さを右側も、左側も、360°全て揃える作業です。
極端ですが、縦振れMAXの状態を作ってみました。
※スポークの長さが決まっているので、実際にはこうなることはありません。
横振れ取りとは
縦から見たときに車体(ハブ)の中心とリム中心を揃える作業です。
縦振れ取りで意識したいこと
スポークは全て同じ長さなので、全てのスポークが均等に360°同じ長さであれば、縦ブレ、横ブレは発生しないはずです。(理論上)
深く考えすぎると沼ります!(∩´∀`)∩
なお、縦振れでニップルを回すときは、次のことを意識(注意)してください。
- スポーク1本だけを締めて振れを取ろうとしない
- 4本一組として考える
「1.」はイメージできると思いますが、1本だけ張っても「縦振れ」は取れません。
ですので、「2.」の4本一組として考えてください。4本1組の考え方は下記画像の通りです。
指で囲っている4本と
指が触っている4本です。
時には2組(8本)で調整したりもします。
縦振れ取り開始
まずは、目視で縦振れが分かるように目印を付けます。
今回は、古いスポークを画像のように設置し確認を行いました。(笑)
ホイールを回転させて、目印との隙間を確認し
- 隙間が狭くなるところは、締める
- 隙間が広くなるところは、緩める
ように調整していきます。
最初は、ガチャガチャ鳴るくらいだったリムも調整を繰り返すと、だんだん締まってきます。
回転させては調整を繰り返し、縦振れが許容範囲の1mm程度になったら完了です。(どのみち再確認を行います。)
縦振れ取りでは、まだニップルに余力を残しておきたいので、締めすぎている箇所があれば再調整が必要になる場合があります。
横振れ取りを行う
縦振れ取りである程度調整ができたので、次は左右の振れを取っていきます。
横振れもまずは下記イメージを待っておきましょう!
ハブの左右からスポークは伸びていますので、
- ハブ右から伸びているスポークを張る:リムが右に引っ張られる
- ハブ左から伸びているスポークを張る:リムが左に引っ張られる
先述した通り、ハブからリムまでの距離が360℃、左右共に一定であれば「振れ」は無くなるはずです。
横振れ取り開始
目印は、縦ブレの時にはリムの内側でしたが、横振れではリムの横に添えて、ホイールを回転させます。
- 目印から1番離れた部分を狭める方向に(画像なら、右ハブから出ているスポークを締める)
- 目印から1番狭い部分を離す方向に(画像なら、左ハブから出ているスポークを締める)
この時、ニップルに力が掛かりすぎていると思えば、反対側のスポークを緩めるなど臨機応変に対応が必要です。
矯正ではなく調整なので、ニップルが硬くて回らなくなるほど締まるのはおかしいと考えましょう。
最終的には、全てのニップルが2Nmの力で締め付けます。
焦らず、ゆっくり、時間を掛けて調整してください!
ここまでの作業で再度「縦」「横」の振れ幅の確認を行い、許容範囲内に収まっていればOKです。
- 縦:±1mm以内
- 横:±2mm以内
スポーク全体を音で確認【重要】
最後に、張りすぎたスポークや逆に張れていないスポークが無いかを軽くスポークを叩いて確認していきます。
左右の全てのスポークを確認してください。
- 「キーン」のような、高く響く音:締まっている音
- 「ゴッ」のような、響かない鈍い音:締まっていない音
のようによく言われますが、全体のスポークを叩いて他の場所と明らかに違う音に注意して聞いてみてください。
アウターとインナーでも音は違います。
この記事を見ている方はスポークの車両に乗っていると思いますので、実際に叩いて「あぁ、こんな音ね!」と経験しておくと良いです。
文字での表現は難しいですが、例えば「カンコン カンコン カンコン キーンコン カンコン・・・ 」のようなイメージ・・・伝わるかな(笑)
張りすぎたスポークのままだと、走行した際に負荷がかかり折れたりする場合があります。
音もある程度均一になったら最後に規定トルクで締めます。
規定トルクで締める
規定トルクは2Nm(0.25kgf.m)です。
スポーク専用のトルクレンチは持っていませんでしたので、手持ちのトルクレンチを2Nmに設定し、スポークレンチで「ああ、このくらいの強さね!」を3回ぐらい繰り返し、感覚が在るうちに手ルクレンチで締めました。
「音で確認」である程度は締め過ぎなども修正されているかと思いますが、硬すぎるニップルがあった場合は、緩めてから規定トルクで締めてください。
「あれ?1回締めて調整したのに緩めるの有りなの?」と思った人!筆者も同じこと思ってました。(笑)
ひとまず、何も考えず下記の最終確認を行ってください。とりあえず許容内ならOKです!
最終確認として、許容振れ幅に収まっているかを確認しスポーク張りは完了となります。
- 縦:±1mm以内
- 横:±2mm以内
お疲れ様でした!
あとは、タイヤを組付けて車体に装着すれば乗れるので、もうひと踏ん張り頑張ってください。
まとめ
以上がスポークの張り方の説明になりますが、正直、DIYでやるにはかなりハードルが高いですよね。(笑)
どうしても感覚に頼る部分が出てくるので、文章だけでは伝わりきらないところもあるかと思いますが、できる限りイメージしやすいように全力で書きました。
スポーク張替に関しては、無理せずお店に頼むのも良い選択だと思います。
でも、一度スタートしてしまえば作業しながらコツも掴めると思いますし、作業を理解しつつ、時間をかけて進めれば、DIYでも可能だと感じました。
実際に作業を終えてみると「あれ?こんなもんか」と感じる部分もありましたので・・・笑
元整備士ではありますので、締め具合など「このくらいかな」と感覚が分かる部分はあるものの、筆者もスポーク張替えは初挑戦でしたからね。
皆さんも「スポーク張替」にDIYで挑戦してみる価値はあるのではないでしょうか。
では、また!